ウィークリーレポート 2023年5月26日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

May 26, 2023

米利上げ期待でドル買いの流れ

◆ドル円、米利上げ期待から底堅い地合い

◆雇用統計をはじめ、米重要指標が相次ぐ

◆ユーロドル、ターミナルレートが意識され上値は重い

予想レンジ

ドル円 137.00-143.00 円

ユーロドル 1.0500-1.0950 ドル

5 月 29 日週の展望

ドル円は、米債務上限交渉を巡る報道に一喜一憂しながらも引き続き底堅い展開が想定される。 米金利見通しとしては、執筆時点で 6 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での 0.25%利上げを 5 割程度まで市場が織り込む状況になっている。また、FOMC メンバーでもタカ派として知られてい るウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「6 月会合で利上げを見送る可能性はあるものの、利 上げ局面を終了する公算は小さい。その場合、7 月会合での利上げに傾くことになるだろう」と 述べ、仮に金利が据え置かれたとしても、次回 7 月会合で 0.25%利上げを予想する声が多くなっ ており、米利上げ期待を背景としたドル買いの流れは継続する可能性が高い。

また、米金利見通しと同様に市場の注目となっているのは米債務上限問題。米政府の資金が底 をつく、いわゆる「X デー」としてイエレン米財務長官が繰り返し言及している 6 月 1 日を来週に 迎えることになる。米格付け会社フィッチが「債務上限交渉の難航を背景に米国の格付け見通し を引き下げる可能性」に言及したが、為替相場の反応は一時的だった。この動きを鑑みるに、市 場ではこの問題に関してすでに「出来レース」と捉えている向きも多い模様。最悪の事態が実際 に実現しない限り影響は限定的となりそうだ。

なお、来週は 30 日に 5 月消費者信頼感指数、31 日に 4 月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、6 月 1 日に 5 月 ADP 雇用統計や 5 月 ISM 製造業景況指数、6 月 2 日に 5 月雇用統計と米重要指標が 目白押し。また、FOMC 前に政策に対する発言が禁じられている、いわゆるブラックアウト期間(6 月 3 日(日)~)前の最終週となる為、要人発言などにも注目したい。

ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)の利上げ期待が徐々に後退するなか、米利上げ期待の継続 と相まって上値の重い展開が予想される。今週はナーゲル独連銀総裁が「数回の利上げが必要」 と述べたほか、ビルロワドガロー仏中銀総裁が「今後 3 回で利上げ停止もあり得る」と発言する など、ECB のターミナルレート(最終到達点)が指摘された。

5 月 22 日週の回顧

ドル円は、週明けの東京市場で 137.50 円まで下押ししたものの、日経平均株価が約 33 年ぶり に 3 万 1000 円台を回復する堅調な動きを見せると買い戻しが優勢に。米長期金利の上昇なども支 えに翌 23 日には一時 138.91 円まで上値を伸ばした。その後、しばらくは節目の 139 円を前に足 踏み状態が続いたが、米当局者からのタカ派的な発言をきっかけに米金利が上昇すると買いが強 まり、25 日には一時 140.23 円と昨年 11 月 23 日以来の高値を更新した。 ユーロドルは米利上げ期待を背景に米長期金利が上昇したため売りが優勢となった。目立った 反発も見られないまま、一時 1.0707 ドルと 3 月 21 日以来の安値を付けた。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

May 26, 2023

NZ、金利先高観は大きく後退

◆豪ドル、CPI で 6 月利上げの可能性を見極め

◆NZ ドル、利上げ打ち止め示唆で下落

◆ZAR、中銀がさらなる通貨安の可能性を指摘

予想レンジ

豪ドル円 89.00-93.00 円

南ア・ランド円 6.65-7.30 円

5 月 29 日週の展望

豪ドルは神経質な展開となりそうだ。足もとでは米金融引き締め長期化観測の高まりと、それ に伴う株安が進んでいるため、豪ドルは対ドル・対円でともに買いを進めづらい状況となってい る。来週以降も情勢の変化が見られなければ豪ドルは伸び悩むと予想され、米金利・株価の動向 には引き続き注意しておきたい。

一方で、31 日は 4 月消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、結果次第では豪ドルの買い 戻しが入る可能性もある。市場では「豪準備銀行(RBA)の追加利上げの可能性は否定できないが、 6 月は金利が据え置かれる」との思惑から、現在は 6 月利上げをほぼ織り込んでいない状態。そ のため CPI は強い結果となった方が相場へのインパクトが大きくなりそうだ。

その他では 30 日に 4 月住宅建設許可件数、6 月 1 日に 1-3 月期四半期民間設備投資の発表が予 定されているが、週後半になれば市場の焦点も翌週(6 月 6 日)の RBA 金融政策発表へと移って いくだろう。 隣国ニュージーランド(NZ)では 30 日に 4 月住宅建設許可件数、31 日に 5 月 ANZ 企業信頼感 が発表予定。今週公表された NZ 準備銀行(RBNZ)の政策金利は市場の予想通り 5.25%から 5.50% への利上げとなったが、声明文で追加利上げに対する言及はなく、見通しでも「現水準で金利は ピーク」との見方が示された。米国や豪州などが追加利上げの可能性を残していることもあり、 今後は対ドル・対豪ドルでも金利先高観という点で不利な状況に置かれるだろう。 南アフリカ・ランド(ZAR)はさえない展開が続きそうだ。25 日に南アフリカ準備銀行(SARB) は市場予想通りに 50bp の利上げ(7.75%から 8.25%へ)を決定。声明文では「コアの財・食品 価格の短期的な上昇が予想されるため、今年の総合インフレ見通しを上方修正した」「インフレの 上方リスクや電力不足などを踏まえると通貨安が一段と進む可能性がある」などと言及。前日に 公表された 4 月消費者物価指数(CPI)ではインフレ率が鈍化したものの、中銀は依然としてイン フレリスクへの警戒姿勢を崩していないことが明らかになった。 国内景気の低迷が続く中でインフレ懸念が高まったことにくわえ、中銀がさらなる通貨安の可 能性を指摘したこともあり、今後も ZAR は対ドルを中心に売り圧力が強まることになりそうだ。 なお、南アフリカからは来週 31 日に 4 月貿易収支の発表が予定されている。

5 月 22 日週の回顧

豪ドルは伸び悩む展開となった。週明け 22 日には買いが入る場面もあったが、その後は米金融 当局者からタカ派発言が相次いだことで全般ドル買いが強まるなか、豪ドルも対ドルを中心に戻 り売りに押された。ZAR はさえない動き。対円ではドル円の上昇につれて底堅く推移していたも のの、25 日の SARB 金融政策公表後は売りに押される展開に。対ドルでも ZAR 売りが強まり、過 去最安値を更新した。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

May 26, 2023

ポンド、金融政策への思惑で神経質

◆ポンド、英金融政策への思惑で神経質な動き

◆ポンド、金利高による成長減速が重しに

◆加ドル、1-3 月期 GDP に注目、米金利や原油相場も取引材料

予想レンジ

ポンド円 170.50-175.50 円

加ドル円 100.50-104.50 円

5 月 29 日週の展望

展望の本文を貼り付け ポンドは英金融政策に対する思惑で神経質に上下しそうだ。24 日発表の 4 月英消費者物価指数 (CPI)は前年比 8.7%上昇と昨年 3 月以来の伸び率となった。市場予想比では 0.5 ポイントの上 振れだったが、英金融当局者を失望させたのは CPI コア(エネルギーや食品・たばこを除く)が 前年比 6.8%と 1992 年以来の水準まで加速したことだった。

CPI の結果を受けて短期金融市場では、約 1 カ月後にイングランド銀行(英中銀、BOE)が開く 金融政策委員会(MPC)での「0.25%の利上げ」を完全に織り込んだ。その後も追加利上げが想定 され、政策金利のピークもそれまでの見込みだった 5%付近から 5.3%超えもあり得るとしてい る。英金利先高観の強まりを背景に為替市場もポンド買いで当初は反応。ただ、一巡後はあっさ りと売り戻されるなど、特に対ドルでの上値の重さが目立っている。

今回の CPI でも英国のサービスや日用品の価格上昇が顕著であるように、英国立統計局のエコ ノミストは「食品価格が歴史的な最高値に近い」ことを指摘。高水準のインフレが国内消費を低 迷させ、経済成長にとって重い足かせだ。加えて、インフレを抑制するための金融引き締め策で ローン金利が上昇し、消費者や企業の支出が圧迫されている。そういった状況での利上げとなれ ば、当然ながら英経済への打撃も大きくなるだろう。悪い金利高が長期化するようなら、ポンド の買いづらさが意識されるかもしれない。ただし、クロス円はドル円の方向性に影響されやすく、 ドル高円安の流れが続くようならばポンド円の下値は限定されるだろう。

加ドルは米金利や原油相場の動向を見定めながら、週半ばに発表される 1-3 月期国内総生産 (GDP)を確かめることになる。前回 10-12 月期の GDP は、前期比年率で横ばいと市場予想の 1.5% 増を大きく下回った。ただ今年に入り月次 GDP が回復基調を示しており、四半期ベースでも改善 が期待されている。カナダ中銀が予測する今年後半からの「経済が供給過剰に陥る」前に、どの 程度まで経済が持ち直しているかが注目される。なお、中銀が 4 月に示した 2023 年成長見通しで は、1.4%増と前回よりも 0.4 ポイント上方修正されている。米金利については、6 月 13-14 日 の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えたブラックアウト期間が 6 月 3 日から始まるため、米連 邦準備理事会(FRB)高官から駆け込み的な発言が出る可能性に注意したい。原油相場は石油輸出 国機構(OPEC)プラス追加減産への思惑で右往左往しそうだ。

5 月 22 日週の回顧

ポンドは対ドルで 1.24 ドル後半から 1.23 ドル手前まで下落。英 CPI 後の上昇も続かず、英景 気の減速懸念や米金利上昇が重しとなった。一方でポンド円は堅調なドル円につれて 172 円後半 まで上値を伸ばし、年初来高値を更新した。加ドルは対ドルでは 1.34 加ドル後半から 1.36 加ド ル半ばまで加ドル安ドル高が進行。米金利高を背景としたドル買いの流れに歩調を合わせた。加 ドル円は 102 円台を中心にしっかり。原油高や堅調なドル円に支えられた。(了)