デイリーレポート 2023年4月11日

April 11, 2023

【前日の為替概況】ドル円 133.87 円まで上昇、植田日銀総裁発言と 5 月 FOMC 利上げ観測

10 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 日続伸。終値は 133.61 円と前営業日 NY 終値(132.16 円)と比べて 1 円 45 銭程度のドル高水準だった。前週末発表の 3 月米雇用統計が米労働市場の底堅さを 示す内容だったことから、米連邦準備理事会(FRB)が 5 月に追加利上げを実施するとの観測が広がる中、 連休明けの NY 勢がドル買いで参入した。植田和男日銀総裁が就任記者会見で、現行の大規模金融緩和策 について「継続することが適当」と述べたことも相場の支援材料となり、24 時前に一時 133.87 円と 3 月 15 日以来の高値を付けた。その後の下押しも 133.55 円付近にとどまった。

ユーロドルは続落。終値は 1.0859 ドルと前営業日 NY 終値(1.0905 ドル)と比べて 0.0046 ドル程度の ユーロ安水準だった。前週末の米雇用統計の結果を受けて FRB が 5 月に追加利上げを行うとの見方が高ま ると、全般ドル買いが進行。前週末の安値 1.0877 ドルを下抜けて一時 1.0831 ドルまで値を下げた。主要 通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時 102.81 まで上昇した。

なお、デコス・スペイン中銀総裁は「ユーロ圏のコアインフレは年内は高止まりする見通し」「3 月発 表の基調シナリオが確認されれば、金融政策の面で実施すべきことはまだある」などと発言し、欧州中央 銀行(ECB)の追加利上げを示唆したものの、相場の反応は限られた。

ユーロ円は 3 日続伸。終値は 145.11 円と前営業日 NY 終値(144.09 円)と比べて 1 円 02 銭程度のユー ロ高水準。植田日銀総裁が会見で「現行の長短金利操作(YCC)やマイナス金利など、大規模緩和を継続 することが適切」との考えを示すと、全般円売りが優勢となった。5 時過ぎに一時 145.16 円まで上値を 伸ばした。

【本日の東京為替見通し】ドル円、底堅い展開か、植田日銀総裁の緩和継続発言で

本日の東京外国為替市場のドル円は、昨日の植田日銀総裁の就任会見を受けて当分の間は金融政策修正 の可能性が低下したことで、底堅い展開が予想される。

植田総裁の発言を受けて、4 月 27-28 日の日銀金融政策決定会合での現状の金融緩和政策維持の可能性 が高まった。これを受けドル円は昨日、日足一目均衡表・基準線 133.78 円を上抜けて 133.87 円まで上昇。 この上昇トレンドが継続するには、明日発表される米国 3 月の消費者物価指数(CPI)が、同月米連邦公 開市場委員会(FOMC)でのドット・プロット(金利予測分布図)を正当化させる内容が必要だろう。すな わち、5 月 FOMC で 0.25%の追加利上げで 5.00-25%まで上昇し、年末まで高止まりする可能性を高めな くてはならない。

CME グループが FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、5 月 2-3 日 FOMC での 0.25%の追加利上げ確率は 70%程度まで上昇している。しかしながら、12 月 12-13 日の FOMC では 4.25-50%へ引き下げられる確率が高くなっており、3 月 FOMC でのドット・プロットの 5.00-25%とは 0.75%の乖離だ。これがドルの上値を抑える要因となっている。

昨日の就任会見で植田総裁は、「日銀の使命である物価の安定と金融システムの安定の実現に向け、力 を尽くしてまいりたい」と述べ、現行のイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)やマイナ ス金利の継続が適当だと述べた。そして、岸田首相との会談で、2013 年の政府・日銀の共同声明につい て「直ちに見直す必要はないという点で一致した」と述べた。

今後の金融情勢次第だが、4 月 27-28 日の新日銀総裁にとっての初めての日銀金融政策決定会合から 6 月辺りまでは、金融政策の正常化に踏み切る可能性は低下した。市場は、日銀新体制の下での YCC の許容 変動幅の再拡大や撤廃の可能性を警戒していたため、植田日銀総裁の現状維持発言で払拭されたことにな る。

植田総裁は、需給ギャップが低迷している状況下では、2%のインフレ目標の達成は困難と述べた。日 本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差である「需給ギャップ」は、2022 年 10-12 月は 11 期連続のマ イナスを記録しており、「デフレギャップ」の状態が続いている。そして、マイナス金利政策についても、 基調的なインフレ率が 2%に達してない中では、継続するのが適当だ、と述べている。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

特になし

<海外>

○08:01 ◇ 3 月英小売連合(BRC)小売売上高調査
○09:30 ◇ 4 月豪ウエストパック消費者信頼感指数
○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○10:30 ◇ 3 月豪 NAB 企業景況感指数
○10:30 ◎ 3 月中国消費者物価指数(CPI、予想:前年比 1.0%)
○10:30 ◎ 3 月中国生産者物価指数(PPI、予想:前年比▲2.5%)
○15:00 ◎ 3 月ノルウェーCPI(予想:前月比なし/前年比 6.1%)
○16:00 ◇ 2 月トルコ鉱工業生産(予想:前月比 2.0%)
○18:00 ◎ 2 月ユーロ圏小売売上高(予想:前月比▲0.8%/前年比▲3.5%)
○21:00 ◎ 3 月ブラジル IBGE 消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比 4.70%) ○21:00 ◇ 2 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比 0.3%)
○12 日 02:00 ◎ 米財務省、3 年債入札
○12 日 02:30 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演
○12 日 06:15 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○国際通貨基金(IMF)、世界経済見通し公表

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

10 日 18:30 植田日銀総裁

「(岸田首相との会談で)政府との共同声明、直ちに見直すことはないと一致」

10 日 19:20

「物価の安定と金融システムの安定に力を尽くす」
「現在の金融緩和は非常に強力なのは間違いない」
「長い目で見た点検が必要かという論点がある」
「総合的に判断し、点検や検証はあってもいい。政策委員と議論して決めていきたい」
「現行の YCC 継続が適当」
「現状、日本では金利を大幅に上げる状況ではない」
「マイナス金利政策、現在の緩和策のベースになっている」
「マイナス金利政策、継続するのが適当」

10 日 19:22 氷見野日銀副総裁

「賃金上昇伴う物価目標の実現を目指す」
「金融緩和が経済の好循環につながることを目指す」
「金融システムとの両立で金融緩和の出口たどることは可能」

10 日 19:24 内田日銀副総裁

「いかに工夫をこらして金融緩和を継続するかが課題」
「5 年間の任期の中で 2%の物価安定目標を達成したい」
「金融市場の安定を常に意識していきたい」

10 日 23:24 デコス・スペイン中銀総裁

「ユーロ圏のコアインフレ率は依然として高いと予想」
「ECB は金融安定を確かにするため対応を準備」
※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線の上で続伸、押し目買いスタンス継続>

大陽線引け。雲の中で引けているものの、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、売りシグナルが優勢な展開が続いている。
しかし、3 手連続陽線で転換線を上回 って引けているため続伸の可能性が示唆されている。
本日は 132 円前半の転換線を支持に押し目買いスタンスで 臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 135.11(3/15 高値)
レジスタンス 1 134.13(日足一目均衡表・雲の上限) 前日終値 133.61
サポート 1 132.26(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 131.53(4/7 安値)

<ユーロドル=4/4 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。
しかしながら 2 手連続陰線で転換線 を下回って引けているため続落の可能性が示唆されている。
本日は転換線 1.0881 ドルを念頭に置いた取引か。基本的 には 1.09 ドル後半の 4 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0973(4/4 高値)
前日終値 1.0859
サポート 1 1.0745(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロ円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。3 手連続陽線で転換線を上回って引 けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は、144 円前半まで上昇した転換線を支持に押し目買 いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 145.67(3/31 高値)
前日終値 145.11
サポート 1 144.11(日足一目均衡表・転換線)

<豪ドル円=88 円後半の転換線を念頭に置いた取引>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯している。
2 手連続陽線でも転換線を下回って 引けており反落の可能性が示唆されている。
本日は転換線 88.88 円を念頭に置いた取引。
戻り売りスタ ンスで臨んだ場合は 90 円前半の 4 日高値が抵抗水準となる。
レジスタンス 1 90.17(4/4 高値) 前日終値 88.73
サポート 1 87.59(4/6 安値)